症例8:卵管異所性妊娠

症例8:卵管異所性妊娠

<解説>

正常妊娠は子宮の中に受精卵が着床するが、子宮以外の場所に受精卵が着床することを異所性妊娠と呼ぶ。
卵管異所性妊娠(または付属器子宮外妊娠)は、異所性妊娠の最も一般的な部位であり、症例の93~97%を占める。

<画像の解説>

  • 超音波検査
    卵巣から離れた付属器腫瘤が最も一般的な所見であり、症例の89~100%にみられることがある。付属器腫瘤の存在は、それが卵黄嚢または生きている胚を含むとき、またはそれが卵巣から独立して動くとき、異所性妊娠に対してより特異的になる。
    通常、黄体は異所性妊娠嚢と同じ側にあり、嚢胞の破裂は腹痛および異所性破裂に似た腹腔内出血を呈することがある。
    卵管エコー源性リング:子宮外妊娠嚢を囲むエコー源性の輪を表す。カラードプラ法による検査では、末梢血管に「リング・オブ・ファイア・サイン」がみられることがある。黄体は同様のカラードップラー血流を有することがある。特に破裂の場合、大量の腹腔内出血、または大量の自由液の証拠があるかもしれない。
    典型的には1~3 cmの腫瘤で、低エコーの中心を囲む2~4 mmの同心円状のエコー源性の縁組織から成る。
  • MRI
    胎嚢の描出にはCTよりMRIが優れている。
    胎嚢はT2強調像で高信号を示す嚢胞。T1強調像で胎嚢および壁に出血を示す高信号領域を伴うことが多い。
    胎嚢(T1強調像で低信号、T2強調像で高信号)は血流豊富な絨毛膜に囲まれている。早期相から強くリング状に増強される厚い壁を持つ嚢胞として描出される。
    よって、MRIでは卵管に血腫があるかどうかを観察し、子宮内妊娠の可能性が否定できれば、患者や婦人科医と合意の上で積極的に造影検査をし、胎嚢(良好な造影効果を示す嚢胞様構造)の描出を試みる。
    胎嚢が不明瞭でも、豊富な血流を反映し、着床部位周囲のflow voidの増生や、周囲の卵管壁の造影増強効果を認める。

子宮外妊娠の診断は尿中・血中HCG値と超音波にて行われるのが基本。超音波で胎嚢が確認できない場合に造影MRI、もしくは造影CTが有用。子宮外妊娠破裂に伴う血性腹水や卵管血種に対してもMRIによる信号の確認が有用である。
診断困難な症例に対しては、MRIが有用な場合も多い。

<鑑別診断>

  • 卵管異所性妊娠の確定診断を示す所見:卵黄嚢を含む妊娠嚢を含む卵巣外付属器腫瘤
    胎嚢と胎極から成る卵巣外付属器腫瘤(心臓の活動の有無にかかわらず)
  • 卵管異所性妊娠の可能性が高いことを示す所見:空の胎嚢(卵管輪徴候またはベーグル徴候)を伴う卵巣外付属器腫瘤
    卵巣外不均一付属器腫瘤
    臨床症状、血清hCG値、子宮および付属器所見を考慮する。
  • 卵管異所性妊娠の可能性を示す所見:空子宮
    子宮腔内の液体(偽嚢)
    臨床症状、血清hCG値、子宮および付属器所見を考慮する。

<治療と予後>

間質性または頸部異所性と比較して、コントロール不能な出血のリスクは低いが、迅速な診断が必要である。
以前は外科的治療のみが行われており、開腹下での腹腔鏡下卵管摘除術が好まれていた。卵管切開術の実施が増加している。
内科的管理には、全身投与または超音波ガイド下直接注入によるメトトレキサート(葉酸拮抗薬)投与がある。メトトレキサート療法後、異所性妊娠はメトトレキサートが奏効した場合でも、その後の画像検査で大きさと血管分布の逆説的増加を示すことがある。