【第8回】外部講師による勉強会~回盲部の炎症について~

【第8回】外部講師による勉強会~回盲部の炎症について~

遠隔画像診断サービス「Y’s REPORT」の遠隔画像診断事業部テレラジオロジーグループでは、レポート品質向上のため、定期的に勉強会を開催しています。

勉強会の一つとして、外部から放射線科医をお招きし、月に2~3回ほど画像や解剖学について講義を受講しています。

毎回症例を事前に提示していただいたうえで、参加者は自分なりのメイン所見、診断、対処方法を予習して勉強会に臨みます。

今回は「回盲部の炎症」についての講義です。

右下腹部痛の鑑別に挙げられる疾患でメジャーなものとしては、虫垂炎・憩室炎が挙げられます。

第3回の虫垂炎の勉強会の際には虫垂の同定の仕方をご教示いただきましたが、

第8回となる今回は復習も兼ね、また憩室炎を中心に再度講義していただきました。

 

回盲部の炎症で疑われる病変

まず、多い病変を除外していくことを教えていただきました。
回盲部で多い病変として、虫垂炎と憩室炎が挙げられますので、まずこれらを鑑別から除外します。

これらは、他の病変が該当しなかった場合に鑑別することになります。

※重要※回盲弁から下が盲腸→上行結腸は後腹膜に固定されているので、動くことはない。盲腸~虫垂は後腹膜に固定されていないので動く。

回腸末端の粘膜および粘膜下層の肥厚

盲腸の粘膜および粘膜下層の肥厚、周囲リンパ節腫大

<回腸末端炎>→炎症が強いと浮腫が起こる。造影で壁内は染まらない。

回盲部の炎症「憩室炎」とは

憩室炎は、憩室(腸管から連続)に糞石が詰まり、炎症や感染が起きた状態のことで、画像上は、

・脂肪織濃度上昇

・憩室内に糞石がある

・虫垂が腫大していない

ときに憩室炎を疑うとのことでした。

若年層で回盲部に炎症がある場合は、クローン病を鑑別に挙げる必要もあります。
漿膜側まで炎症が見られる場合は、クローン病の可能性があります。下が、クローン病の画像です。

カンピロバクターや炎症性腸疾患にも注意を

腫瘍と憩室炎では、壁の染まり方が違います。

・腫瘍:壁内まで染まる

・憩室:外側だけ染まる場合も多い

さらに、小児の場合はリンパ節炎も鑑別に挙がるといいます。

また、回盲部で炎症が起こりやすい疾患の鑑別として、

・カンピロバクター(回腸末端炎)

・炎症性腸疾患(クローン病や大腸炎など)

が挙がることも教えていただきました。

 

余談:カンピロバクターとは〈※厚労省HPより引用〉

主に生または加熱不足の鶏肉を通じて感染する細菌。感染源としては、調理中の不適切な取り扱いや二次汚染もある。

この細菌はヒトや動物の腸管内でのみ増殖し、通常の加熱調理で死滅する。

感染後、数週間以内に手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難を引き起こす「ギラン・バレー症候群」を発症することがあるため、注意が必要。

 

 

【まとめ】回盲部病変の読影手順

回盲部の炎症を同定していく際のおさらいです。

①まず虫垂炎、憩室炎を除外する(多い病変は先に除外する)

②回盲部で炎症が起こりやすい病変は他に、カンピロバクター、炎症性腸疾患(クローン病、大腸炎など)

③最終的に憩室炎が疑われる場合:腸管から連続して糞石が詰まり炎症を起こしているか

憩室炎でfree airや膿瘍が形成されている際は手術適応になり、膿瘍を疑う場合は造影で精査し、造影でring enhancementがあれば膿瘍形成と判断されるとのことでした。

腸重積との鑑別方法やカンピロバクターについてなど、色々な疾患の症例を交えてご講義頂き、画像の奥深さを改めて学ぶことができました。

 

引き続き、幅広い知識を吸収できるように学んでいきたいと思います。