スペースコンピューティングの到来により、医療分野における持続可能性と技術革新が重要視されつつある中、医療現場においても質の高いサービス提供のため医師の役割が変化しています。今回の対談では、Apple Vision Proが登場したことにより、スペースコンピューティングの技術が、どのようにして医療の質を向上させるのか?その可能性についてご紹介します。
3D技術で変わる医療現場の未来
谷田部氏(HiGH CONCEPT):前提としてApple Vision Proの可能性についてお話しすると、今まで平面で見ていたもの、コンピュータなどが、これから3Dになり、没入して体験するようなコンテンツに変わっていくということですね。
簡単にいえば、体験できるようなデータや画像になる。というとイメージしやすいかと思います。3D化していくというので、今後インターネットや作業するコンピュータのソフトウェアも3D化されていくということです。
スペースコンピューティング、空間コンピューティングという方もいらっしゃいますが、その可能性について私が感銘を受けた部分についてお話ししていきたいと思います。
例えば、医師が、看護師にオペや注射などの業務の手順や方法などを確認する際に、リアルで行うにはハードルが高く、難しい場合がありますが、3Dを用いることで、実際の患者に見立ててトレーニングを行うことが可能になります。まだ開発フェーズではありますが、こうした動きそのものが画期的であり、可能性を秘めていますよね。
中山(ワイズ・リーディング):私が勤務している熊本機能病院では、ロボット手術というか、3Dデータを学習させたものに掛け合わせて、ロボットが骨を削ったりしていく、という様なことをやってます。
まさにこことリンクしてくるようなところかもしれないですね。
谷田部氏:そうですね、まさに近い領域であると思います。
例えば、Meta社の3Dデバイスでは、医療教育などがあり、人間の臓器を3Dに映すことで実際の様子をスライスして中を観察したりすることも行っているんです。
Apple Vision Proの出現によって、よりリアリティの高いものとしてこうしたことが可能になります。
先ほどのトレーニングに近いですが、手術計画を立てる際なども、患者様の状態を3D化してそれに合わせて手術前に手順やイメージトレーニングを行うと、現状の紙ベースで考えるよりもより鮮明に医師だけでなく看護師やチーム全体が共通したイメージをしやすくなるのではないかと思います。
また、子どもの治療などでも効果を発揮できるのではないかと考えます。
例えば、好きなキャラクターになって緊張状態を解放してあげることで、子どもがリラックスして診察を受けることができたり、ボイスチェンジャーを使えば、まさにそのキャラクターそのものになれてしまう。
中山:僕らの領域の話でいくと、空間の中にいくつも情報を入れ込むことができるようになるということは、とても魅力的だと思います。
僕らの業務に直結した場合、モニターの中の限られたエリアだけで判断しているのが今の現状です。そうすると、何が生まれるかと言うと、埋もれている情報には、アクセスできないということなんですよね。
例えば、一つの画面で文書やテキスト記入する画面を立ち上げて、もう一方では、現在の状態の画像を画面にて立ち上げて、3つ目のモニターには、過去の画像を映すと言う様に、異なる事象を表示して使用すると、いくつもの患者さんの情報をモニターで切り替えながら提示していかないといけなくなる。Apple Visionの様な空間の中で360度に映し出してみることができるということはまさに、魅力的であり効率的であると感じました。
谷田部氏:なるほど。そういった状況にあるということですね。3台のモニターを駆使できる環境が、十分に揃っている医療機関や企業は少ないのが現状かなと思います。
中山:先ほどの話から透過性を変えることによって、見え方が異なることがあると思うのですが、こういった技術は、すでに使用されているんです。ただ、使用するためには、専用のワークステーションが必要となり、高額な機械になるため簡単に導入できないんです。
Apple Vision Proの登場で、必要なデータを全て入れることが可能になれば、それ自体がワークステーションの役目となり、今後の医療、診断の未来はガラリと変わるでしょう。
テクノロジーが導く医療の新時代とは?
中山:今、我々が取り組んでいる企業活動に、谷田部さんにも今回登壇いただきました『みらいクラブ』があります。
私自身が、最も伝えたいこと。というならば、”医師×〇〇”の一つの事例が、この最新テクノロジーやデータにあたるのかもしれないですね。上流の考えという意味でなんですが。
医師が、別のスキルや知識、業界と掛け算されることで、無限の可能性があると思うんです。
医師×スペースコンピューティングと言う可能性について考えた時、もしかしたら医師×何かの可能性がサブタイトルであり、スペースコンピューティングの可能性を医者〇〇シリーズと言われる様になるかもしれないですね。
そうすれば、医療業界の未来の展望に関するヒントやアイデアが生まれてくると思います。
医者で医局に属さずに、医療系ベンチャーを立ち上げて、医療の課題に対してのビジネスモデルを作ることを推奨する仕組みが、現状では、限りなくゼロに等しいです。
だからこそ、人と人とが繋がり、可能性を拡げてもらうことに価値があると信じています。
谷田部氏:そうですね。とても素晴らしい考えだと思います。
例えば、医師を集めて、コミュニケーションの場を設け、情報を交換することで、様々なアイデアが生まれてくると思います。いわば、アソシエーションの様なコミュニティと言えばいいでしょうか。
先ほどのお話に倣っていえば、医者とエンジニアが手を組んで何か始めることもいいかもしれないですね。アドバイザーとして参画してビジネスモデルを生み出すこともできそうですね。
今回、私が感じたこととして、『みらいクラブ』は、医学生がその医療知識だけでなくて、テクノロジーやデザインといった、自分が直接関わったことのない世界や分野にも触れ合える場であること。これ自体が、非常に画期的であり、素晴らしい試みだと感じました。
これも次世代へ向けた医療の未来を切り開いていく活動の一つだと思います。
先生の仰しゃる通り、異業種の人とつながり、仕事を知ることにより、自分の可能性を拡げる一歩になるのではないでしょうか。
中山:そうですね。まさに、この医者の社会課題をどう改善していけるかは、外からの情報を吸収することが刺激になり、感覚や価値観、考え方が感化されていくと思うんです。
やはり、その環境下だけで物事を捉えてしまうと、目先のことやこのエリアだけしか考えなくなってしまいがちです。
その結果、少し語弊はありますが、その分野に精通しているというだけで威厳を保つ人に育ってしまいかねません。そういった部分を変えていきながら、社会課題や医療課題に真っ向から立ち向かえる人を育むこと。
これは、若い段階から様々な異業種・業界との交流を活発化することで、今見ている世界を広げること、これによりその立場にたった目線で考える思考能力が身についていくのかと思います。
そういう人が何となく医師は権力があるんだとか権威があるんだとか言って、鼻が高くなるような、そういう医療人に育ってしまうという現状が絶対あると思うので、やっぱりそこを変えるためには、 若い段階からいろんな人と交流をしたり、いろんな社会課題を知ることによって違う目線というものを、入れることが大事なのかなという気がしています。
谷田部氏:なるほど。みらいクラブのあり方にはとても納得します。様々な大学や起業家と情報交換できるような場であり、今後もそういった中で医療を軸として多様に広がっていくことで、次世代医療についての明るい展望を描いていってもらいたいです。
中山:ありがとうございます。そうですね。
やはり社会課題、この認識は昔と違い、現在は解決するツールが身近に揃ってきていると思います。
このインパクトは大きいと思っていまして、私が会社を設立した時は、せいぜい通信が始まり、便利になってきた、ぐらいの話だったのが、その後、iPhoneの登場や、RPA、5G、そして、AIと、もう数年前までAIなんて想像もつかなかったわけですから。
最近は、AIエンジニアも次々に登場し、AIを使った医療課題解決、社会課題解決というのができてくる時代に突入しているということです。
この10年とここからの10年また一気に加速していくことを期待しています。
株式会社 High Concept/代表取締役
株式会社 Mawari/創業者/Chief Futurist Officer
データマーケティングを行う株式会社High Concept代表。XRの配信ネットワークを開発する米国に本社を持つ株式会社Mawariの創業者。
クリエイティブディレクター及びデータコンサルタントとして、過去20年に渡りNike Japan、NHK、NTT、avex、JTB、Roland、MediaDo、MUTEK Japan等に携わる。
カンヌ国際広告祭 2008 金賞、WORLD MEDIA FESTIVAL 2016 金賞を受賞。
Netflix、Uber、American Express等のデータ分析に携わる、業界最大手のデータ分析ツール会社のMixpanelの日本における公式データアナリスト。
現在、現実とバーチャルを融合させたMixed Realityでのインタラクティブなマーケティングに取り組んでいます。
株式会社ハイ・コンセプト
https://highconcept.jp/